植物に必要な栄養【窒素】
今回は、『マメ科植物の窒素(ちっそ)固定』についてご紹介します。
いきなり難しい言葉が出てきましたが、シンプルに言いますと土作りの話題です。
自給自足、家庭菜園でほとんどの人が興味が湧くテーマである『土づくり』。
植物が育つためにはタンパク質が必要で、そのためにはその元となる窒素が必要です。
窒素がなければ植物はその形を保ち、成長することは出来ません。
普通は肥料を土に与えることで窒素を供給しますが、それ以外にも方法があります。
それが、【マメ科植物の根粒菌による窒素供給】です。
彼らは空気に存在する窒素を取り込んで利用することが出来ます。
詳しく学ぶと興味が尽きないこの世界。
根粒菌について学び、幸せな家庭菜園ライフに生かしてみましょう。
マメ科植物は窒素を取り込む
マメ科植物は、
『窒素(N)』を空気中から体内に取り込んで栄養に出来る植物
です。
植物の体は、私たち人間と同様に『タンパク質』から作られています。
窒素は、その『タンパク質の元』となる要素。
窒素はどこに存在するかというと、大部分は空気中です。
空気を占める気体の割合は、酸素が21%、二酸化炭素が1%、そして窒素はなんと78%です。
空気中のおよそ8割を占める窒素ですが、この空気中の窒素を取り込むことが出来る植物は『マメ科』だけなのです。
大豆などの野菜は思い浮かべやすいですが、実はクローバーなどもマメ科植物です。
根粒菌との共生
マメ科植物は、【自身の身体の元】となる窒素を、空気中から取り込むことが出来ます。
他の植物はそれが出来ません。基本的には窒素が含まれる肥料を与えて根から吸収させる必要があります。
マメ科植物の根には、『根粒菌(こんりゅうきん)』とよばれる菌が共生しています。
マメ科植物の根っこを見てみると、ぷつぷつとした小さなコブが見えます。
この中に根粒菌は存在しています。
これは、マメ科植物と共生している微生物です。
マメ科植物は、根粒菌を根の中に住まわせてあげることでウィルスなどの攻撃から根粒菌を守ってあげています。
そしてさらに、光合成で作った糖分などの栄養素を根粒菌に供給してあげています。
根粒菌は、その代わりに窒素を空気中から取り込んで、マメ科植物に供給してあげています。
この『ギブ&テイク』の共生関係でマメ科と根粒菌はコンビを組んでいます。
実は、根粒菌はエサとなる有機物があれば根の中でなくても土の中で生きることが出来ます。土の中で単独で生きているときは窒素を取り込むことはしません。
根の中で共生しているときだけ、窒素を取り込んでマメ科植物に供給します。
余剰分は分け与える
根粒菌は宿主であるマメ科植物に窒素を供給していますが、余った分の窒素は土の中に放出します。
根粒菌が土の中に放出した余剰分の窒素は、他の植物が栄養として取り込むことが出来ます。
窒素を自分だけで溜め込むことをせず、『他の命を育てること』に使われます。
クローバー
私たちのバックヤードガーデンにはクローバー(シロツメクサ)がたくさん蒔かれています。
クローバーと野菜を同じベッドで育てることで、窒素の供給を根粒菌にお任せしています。
野菜とクローバーを共生させるのはコツが要りますので要注意ですが、これ以外にも方法があります。
『緑肥』と呼ばれる方法で、野菜を育てていない期間にれんげやクローバーなどのマメ科植物を蒔き、野菜を植え付けるまでに土の中にすき込むやり方です。
家庭菜園では、野菜と一緒に大豆などの豆類を育てるだけでも良いと思います。
いろんなアイデアを出して、根粒菌を活用してみましょう。
共生
『共生』はハンドレッドガーデンが大切にしているテーマです。
命は、他の命との繋がりによって生かされています。
マメ科植物と根粒菌は、なぜ余った窒素を他の命を育てることに使うのでしょうか。
自分たちに必要な分だけ作るか、余剰分は蓄えておいたほうが効率がいいように思います。
考えても分かりませんが、なにか神秘的なものを感じますね。
私たちはこのような共生関係をガーデンの中で表現し、皆様にお伝えしたいと思っています。