今回はコンポストと微生物の関係について記事を書きます。
我が家では毎日発生する生ごみをコンポストにてたい肥に変えています。微生物たちによって発酵・分解を行ってもらっています。
山の落ち葉が自然と分解されていくのも、微生物たちのおかげです。
では、実際どのような仕組みでこれが行われていくのか気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では屋外で定期的に切り返しを行う通常のコンポストにおいて、微生物がどんな役割を果たしているかをまとめてみました。
微生物の役割を知ることで、コンポストづくりに役立てることが出来ます。
微生物の連携プレー
たい肥づくりは、複数の微生物が連携して働くことによって行われています。
それぞれの微生物は『酵素(こうそ)』と呼ばれる成分を出して、生ごみを分解していきます。
①糸状菌(カビ)
↓
②放線菌
↓
③細菌(納豆菌/乳酸菌/酵母菌など)
糸状菌による糖化
コンポストに生ごみや落ち葉を入れると、最初に活動するのが【糸状菌】。
糸状菌は、いわゆる【カビ】のことです。発酵食で大活躍する『こうじ菌』もこの種類です。
糸状菌は他の微生物よりも増えるスピードが速く、炭水化物やタンパク質を一気に食べていきます。
一番大きな役割は、デンプン(炭水化物)を分解して小さくし、単糖類にしてくれます。
これはつまり『甘くなる』ということですね。糸状菌が甘酒づくりの名人と言われているのはこのためです。
微生物はみんな糖質が大好きなのですが、最初に糸状菌が働き、糖を食べやすい大きさにしてくれること(糖化作用)で他の微生物が活動しやすくなります。
本格的なたい肥を作る際、最初に発酵起爆剤として米ぬか(炭水化物)を入れる人が多いのはこのためです。米ぬかを入れるとまず糸状菌によって他の微生物が食べやすい大きさになるので、いろんな菌が活動を始めて全体の発酵が進みます。
糸状菌が食べ始めると、少しずつ熱を帯びてきます。私たちも頑張って活動すると体温が上がるように、菌たちも活動を始めると温度が上がります。
温度が上がり、40度くらいになると糸状菌は活動できなくなり死んでいきます。糸状菌はあまり熱には強くないのですね。
放線菌による繊維質分解
糸状菌が活動をやめると、次に活動を始めるのが【放線菌】です。
放線菌はカビと細菌の中間的な存在で、土の中にたくさん存在して、『土の臭い』を作っている微生物です。
放線菌はある程度温度が高くても活動することが出来ます。放線菌は、糸状菌が食べることが出来なかったやや硬めの繊維質(セルロース)のものを食べることが出来ます。
放線菌が最大限活動をすると、温度は60度くらいになります。
細菌たちによる分解と合成
放線菌の活動が弱まってくると、次に働き始めるのが【細菌】です。細菌たちは放線菌が分解して柔らかくなった残りのものを食べていきます。
具体的には、納豆菌、乳酸菌、酵母菌などです。どれも聞いたことがある名前ですね。これらは糸状菌や放線菌が生み出した糖分を食べてエネルギーを得ながら、残りの糖質やタンパク質を分解していきます。
この時期、最近達はタンパク質を分解してアミノ酸を作ったり、有機酸やビタミンなどいろんな成分を合成していきます。
ミミズやキノコの完熟期
出来上がった完熟たい肥にはたくさんの細菌がいます。初期から中盤で活躍した糸状菌や放線菌も存在します。
完熟したら、微生物を食べるミミズやトビムシが出てきたり、糸状菌の仲間であるキノコが生えてきたりします。
土の温度
微生物が有機物を分解していく流れをまとめてみましたが、気になるのが一般家庭のコンポストにおける『土の温度』や『切り返しの必要性』ではないでしょうか。
まず土の温度ですが、庭やベランダに置くような小規模なコンポストに少量ずつ生ごみを入れていくやり方では上述したような60~70度まではなかなか上がりません。上がっても30~40度くらいではないでしょうか。
上述したような温度による明確な微生物の変遷は起こらず、実際にはいろんな菌たちが共存しながら分解が進んでいると思われます。
私たちの場合、普段は温度などあまり気にせず生ごみと土をポイポイ投げ入れています。夏場など気温が高い時期は野菜残渣などは数日で分解されることもあります。
気温が低く分解スピードが低い冬場だけしっかりと狙って発酵を促します。その際はぼかし合えや米ぬかを発酵起爆剤として投入し、水分量をしっかり調整して発酵しやすい環境にします。あとは、ビニールで覆って放熱を防いだり工夫して温度を上げていきます。
※ちなみに、温度が上がらないことのデメリットとしては『①雑草の種が死なずに残る』ことと、『②病原菌が死なない』、そして『③虫が湧きやすい』ことです。病原菌については、たい肥化した後に年単位で寝かせておくと太陽光や雨による洗い流しで居なくなるそうです。
切り返し
『切り返し』とはコンポストを混ぜて微生物に空気を提供することを意味します。
私たちの屋外コンポストでは通常半月に一度くらい切り返します。酸素がある状態で働く菌を『好気性』、酸素がない状態で働く菌を『嫌気性』と言いますが、それらがバランスよく働くようにするためです。ぬか床と同じような理由です。
それぞれの微生物について調べてみると、糸状菌は好気性、放線菌や酵母菌は好気性と嫌気性どちらも行い、乳酸菌もどちらも行うが嫌気性のほうがよく働く、とのことです。
分解を早めたいときは『米ぬかなどの糖質』や、『微生物たっぷりの落ち葉』を入れて切り返す、などいろいろ工夫してみると良いでしょう。
切り返しを行いすぎると分解が遅くなりますので、ここは感覚でさじ加減しています。ちゃんと言語化できるようになれたらいいなと思っております。