発酵食品の基礎知識【面白すぎる発酵の世界】

発酵

ガーデンで野菜を収穫していると、自然と興味が湧いてくる『発酵食』の世界。

発酵食は、コンポスト(たい肥)と同様に『微生物』を利用した私たち人間の文化的な営みです。

発酵食を知ることで、毎日のご家庭の食生活は素晴らしい体験へと変わります。


初めて味噌を手作りして食べたときの感動は忘れられませんし、日常的につくる漬物は毎回最高の味です。

今回は、発酵食の基本的な知識をご紹介します。

発酵食とは

発酵食品とは、『微生物により有機物の変換』です。


食べ物を放置しておくと、その中に様々な微生物が繁殖し、タンパク質や糖質などの有機物を分解します。

このとき、食べ物は微生物によって別の成分へと変化します。この成分が私たち人間にとって役に立つものを『発酵』と呼んでいます。

食べ物を発酵させて食べることで、

『美味しくなる』

『長期保存が出来るようになる』

『栄養価が高くなる』

など様々なメリットを得られます。




発酵食品の歴史

発酵食品は世界中で創られており、文化として根付いたのはこの数千年ですが、石器時代からすでに存在したと考えられています。



最初に発酵食品が生まれたきっかけは、おそらく偶然。


最初に生まれた発酵食はお酒やヨーグルトだろうと言われています。

例えば、ブドウを潰して置いておくと皮についた酵母菌によって自然発酵します。これを飲んだ人が『美味しい』ことに気づき、ワインとなりました。しかも、腐らずに保存することが出来たのです。

かつての人々はそのような偶然の必見や経験を積み重ねていったのでしょう。

何か目に見えないもの(菌)が、食べ物の味や香りを変えて保存もしてくれる。

食料を計画的に生産していく中で『腐らせずに美味しくなる』菌を上手に見分け活用するようになったのです。

発酵と腐敗

発酵と腐敗は紙一重のものです。

人間にとって役に立つものを『発酵』、役に立たない、食べると危険なものを『腐敗』と呼んでいます。



『菌によって分解される』という原理は同じですが、腐敗は人間にとって有益ではありません。腐った食品は味・臭いが強烈で、食べたらおなかを壊す可能性もあります。


ここで外国から見たら腐敗か発酵か分からないものをいくつかご紹介します。


納豆

私たちが大好きな納豆は外国の人から見たら『腐った豆』かもしれません。しかし、私たちのご先祖様は勇敢にもそれを食べ、美味しいことに気づきました。もし美味しくないと感じたら『腐敗』で片づけられたかもしれません。ネバネバ糸を引いている状況をみると、腐ってると思われても不思議ではないですね。

シュールストレミング

世界で一番臭いと言われる食品として有名な『シュールストレミング』。これは産卵前のニシンに塩をまぶして漬け込んだもので、嫌気性の乳酸発酵によって出来ます。そのまんま、腐った魚の臭いとのこと。

キビヤック

死んだアザラシのお腹の中に鳥を詰めて発酵させる『キビヤック』。これはカナダのイヌイット族の方々が作る発酵食らしく、アザラシのお腹を裂いて中身を取り出し、鳥をぎゅうぎゅうに詰めて土に埋めて発酵させるとのこと。

そのまま鳥の肉を食べたり、鳥のお尻の穴から絞り出す発光汁を調味料として用います。日本人は耐えられないほど強烈なものらしいです。ビタミンが不足しやすい現地の人にとっては、貴重な栄養源なのでしょう。

ホンオフェ

これは朝鮮半島の南部で作られるとされるエイの発酵食品です。捕れたエイをすぐにツボなどに入れると、自然に発酵するとのこと。日本人は耐えられないくらいの臭いらしいですが、現地では高級品の扱いらしいです。

発酵と見なすか、腐敗と見なすかはその地域の人たちの文化や味覚などが影響するようです。このようにして国や地域ごとの独特な食文化が生まれるので、面白いですね。


菌の役割

発酵を担う微生物は大きく分けて『カビ(糸状菌)』『酵母』『細菌』です。



これらの菌は私たち人間と同じように、外から栄養を摂取しなければなりません。


私たちが食べ物を唾液や消化液で分解するように、微生物もまず食べ物を分解しなければ自身の身体に接種することが出来ません。


このとき微生物が生み出す『酵素』が食品を分解します。

例えば、糖分(でんぷん)は分解されてブドウ糖になり『甘味』に。

タンパク質は分解されてアミノ酸になり『旨味』に。


乳酸菌によって生まれる乳酸や、酵母によって生じるアルコールは腐敗を起こす菌の増殖を抑えてくれます。

このようにして味や香りは複雑で奥深いものになり、長期保存がきく『発酵食品』が出来ます。



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